不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「・・・ごめん。」
コウが、私の目を見ずに謝った。
その肩は、力なく落ちていて、私以外に見せるコウとは、まったく違っていた。
「コウ、あんたね・・・謝って許されると思うの?」
私は、コウを強く睨みつけた。
「・・・・うん。」
コウは、肯いた。
「・・・・そんなわけ無いでしょ?私の友人のマイを殴ったのよ?絶対、許してやんない!!」
私の怒りは、頂点に達した。
もし、他の人がこの光景を見ていたなら、私の頭の上からは、きっと湯気が出ていたことだろう。
「・・・何でだよ・・・。」
コウは、不満そうな目で私を見た。
「当たり前でしょ!」
「ルミちゃん、昔、悪いことしても、ちゃんと謝ったら、許してくれるっていったじゃないか!!」
「・・・はい?」
私は、コウの言ったことの意味がわからなかった。
いや、言っていることは分かるのだが、それは、6歳ぐらいの子供の場合である。
「・・・ルミちゃんの嘘つき。」
コウが、非難めいた目を私に向けた。
「・・・あのね、コウ。あんた・・・。」
ここまで話したところで、私の家の玄関から母親が、顔を出してきた。