不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「・・・どこが似合ってるのよ。ただの不良でしょ。」
私は、ムカついた口調でつぶやく。
「あら、ルミ、コウちゃんくらいの年齢は、不良くらいの方が、カッコいいのよ?」
母親は、私を小馬鹿にした表情で見る。
「ですよね。」
そして、なぜか、母親に同調するコウ。
「それより、どうしたの、コウちゃん?こんな玄関で。」
「実は、ちょっとあって・・・。ルミちゃんに謝りに来たんですけど、許してくれないんですよ。」
困ったような表情で母親の同情を誘うコウ。
「まぁ!この子、融通が利かないから。困ったものだわ。・・・そうだ、立ち話もなんだから、家の中に入りなさいよ。」
母親のまさかの言葉。
そして、当然、コウはと言えば、満面の笑みで、「はい、お邪魔します。」と答えて、私より早く、私の家の中へと入っていった。
「・・・・・コウの奴、何で私に謝りに来たのに、私より早く私の家に入ってんのよ?」
私のつぶやきは、誰もいなくなった私の家の前の道に小さくこだました。
「・・・どうしたの?早く入りなよ、ルミちゃん?」
コウが、玄関のドアから顔だけ出して、私に声を掛けてきた。
「・・・・言われなくても入るわよ!!!!」
私は、思いっきり、玄関のドアから顔だけ出しているコウを睨みつけた。
コウは、その私の視線を受けて、素早く、焦ったような表情で顔を引っ込めた。
「・・・・まったく、何でこうなるの?」
私は、ブツブツと言いながら、家の中へと入っていった。