拝啓 隣にいない君へ(短編)
 後から後から、悔やみが襲ってくる。あの言葉を取り消すことはできないし、君はもう居ない。呆気なく終わってしまった、約二年間の関係。途方に暮れながらも、考えるのは君のことばかりで。愛しさと切なさで、心の奥がズキズキと音を立てている。



「……刹那……」



 呟いた君の名前は、一体何度目になるのだろう。そう思うくらい、君という存在が頭から離れなくなっていた。

 失ってから気付くなんて、僕は本当に馬鹿だ。どうしてすぐに謝らなかったのだろう。どうして君を追いかけなかったのだろう。大切な存在だということは、十分に分かっていた筈なのに。

 後悔ばかりで、本当に惨めで情けない。何をする気にもなれなくて、再びベッドに舞い戻った。



「あー……タイムマシーンに乗りたい……」



 そんなものは、本や映画の中での話だけど。何でタイムマシーンがないんだろう、と無茶苦茶なことを考えてしまうのも事実。君は電話番号もアドレスも変えてしまったから、連絡を取る手段がもう何もないのだ。あんなことをしたんだから当たり前だが。

 溜め息をついて目を閉じたら、深い深い暗闇へ落ちていく。僕はいつの間にか、眠りの世界へと旅立っていた。
< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop