想うのはあなたひとり―彼岸花―


そう言って後ろにある花瓶を指差した。




「肝心な花がないじゃん?」




「花は私が持ってきたの。一緒に飾ろ?」



奈月の後ろにちらりと顔を出す赤い花。
何だっけ、この花。
よく見るけど…。



「別にいいよ。」



せっかくの学校一の美女からの誘いだし断るわけにはいかない。
俺は立ち上がり奈月の後ろを歩いていく。

廊下を歩いているとやはり視線が痛かった。
男子は必ず奈月に振り返っている。
さすが、学校一の美少女。



奈月が行き着いた場所は、静かな水飲み場だった。
錆びた蛇口から水を出し、白い色の花瓶を洗う奈月。


俺はポケットに手をいれてその光景をじっと見ていた。



耳にかけられていた髪の毛がするっと落ちていく。
それの瞬間、胸が弾んだ。

奈月を照らす太陽が余計に綺麗にさせている。




「美波くんってすごく綺麗な顔してるよね。」




それは誉め言葉?
それとも嫌味?



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