想うのはあなたひとり―彼岸花―


奈月の第一印象は教科書のような女性だった。



転校してきてから約一週間経ったころ、奈月が俺に話しかけてきた。
奈月の存在は少し前から知っていた。
理由は“学校一の美少女なのに恋愛に興味のない硬派な女性”という噂があるらしい。
そう友達になったばかりのヤツに聞いたのだ。


確かに奈月は誰が見ても頷くほどの美人だ。
気取っていなくて、誰からにも頼りにされているくらいの秀才で。
完璧な人だった。


俺は完璧すぎてちょっと嫌だったけれど。
絶対裏の顔があると思っていたから。




「美波くん、花係だよね?」




いきなり何を言い出すんだ、池内奈月。


初めての会話にふさわしくない内容。
思わず笑えてしまう。



「俺、花係なの?てか花係って何すんの?」




「そうよ?花係、一人分空きがあるから。後ろに花瓶があるでしょ?それにお水いれてお花を飾るの」





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