想うのはあなたひとり―彼岸花―



どうしてあなたは椿と同じことを言うの。




「ねぇ、何で椿は一番後ろがいいの?」




「ここからぜーんぶ見えるから!!」




大きく手を広げて私に言ったよね。
そのあとその手でぎゅっと私を抱きしめてくれたよね。
そんな椿の小さな体から感じる温もりが優しかったのを覚えているよ。




でもこれはもう過去のこと。
今隣に座っているのは椿ではない。
皐なのだ。



「ふーん。そうなんだ…」




「妃菜子の指ってさ、すごい細いよね。ピアノとかやってたの?」




握られた手を見つめこう言った皐。
いきなりのことで慌ててしまう。
だって今まで過去の思い出の中にいたのだから。



「ピアノはやったことないよ?なんで?」




「指が細い人ってすごく繊細なんだって。妃菜子って繊細なの?」




「…それどういう意味よ?喧嘩売ってるの?」





その次の瞬間、皐は眩しい笑顔を見せた。




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