想うのはあなたひとり―彼岸花―
~8.ピンク色の頬の少女~



あの満天の空から零れたのは流れ星ではなかった。
私の涙だった。
そして弱さだった。



今でも覚えてる。
華奢だと思っていた皐の腕が筋肉で硬かったと。
優しさで溢れていたと。
だから包まれた瞬間、私から涙が流れなくなったのだ。


そして時は過ぎ、気づいたらあの夜から数週間近く経っていた。

あのあと私たちには何もなかった。
少し話をして皐は「寝るから」と言って帰っていった。
もちろん玄関から。
ベランダをまた跨がれて何かあったら取り返しがつかないと思ったから。
何かあったら…と想像すると怖くてたまらない。




そして今日も私は学校に来ている。
休んだことはない。
家にいるより学校にいた方がいい。
気持ちにも余裕が出来るから。



「皐、バイト始めたんだって」


頬杖をつきながら眠る皐を見て小絵は言った。




「そうなんだ…」





だから授業中も休み時間も寝てるんだ。





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