想うのはあなたひとり―彼岸花―


気持ちよさそうに眠る皐を見ていたら穏やかな気持ちになった。
まるで日向ぼっこをしている猫のよう。
思わず髪の毛を触りたくなる。


最近私おかしいの。
皐を見てると触れたくなってしまうの。
椿に会えないから似ている皐に椿を照らし合わせているだけなのかなって思うけど、何だか違う気がするんだ。




「バイト…何してるのかな?夜遅くまでしてるのかなぁ…」




「心配なんだね、小絵ちゃん」



「すんごくね…」




はぁ…とため息混じりの息を吐く小絵。
そんなとき黙って私たちの会話を聞いていた弘樹が口を挟んだ。




「もしかしてホストとか?」





「弘樹、いい加減な冗談やめて。あたしたち未成年だしお酒飲めないし、法律で決められてるでしょ?」




小絵は冷ややかな目で弘樹を見る。
すると弘樹が「ごめん」と小さな声で言った。
きっと小絵の顔が怖かったのだろう。




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