想うのはあなたひとり―彼岸花―


オレンジ色に染まる車内。
私の感情は真っ赤に染まっていく。


考えたくない。
息が出来ない。
苦しいよ、助けて。




私は電車を降り、小さな歩幅で家を目指す。
するとポケットの携帯が震えだした。




着信 保科さん




「…保科さんだ。どうかしたのかな?」




私は気づいていなかった。
このとき、ポケットからひらひらと落ちていく一枚の紙の存在を。




「もしもし?どうかしました?」





『ごめんね、何回も。金曜日のことなんだけど駅に着いたら連絡して?迎えに行くから。』




「すいません、わざわざ。着いたら連絡しますね」




『なんか元気ないね?やっと椿くんに会えるんだから元気出さないとね。じゃあまた』




そうだ、金曜日椿に会えるのだから…元気出さなくちゃ。
でもこの罪悪感が消えないのなら私は椿の顔を見て笑うことは出来ない。





「あの…」




突然後ろから声が聞こえてきた。
振り返るとそこには学ランを着た男の子が立っていた。




「はい?」





「これ、落としましたよ」




そう言って皐からもらった紙を渡す少年。
私は「ありがとう」と言うと、少年は足早に去っていった。



顔ははっきりと見えなかったけれど頬はピンク色だった。
そういえば告白の決意を言った小絵の頬もピンク色だったな…




ピンク色の頬の少女の恋は、
努力と強さの結晶だったんだ。







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