想うのはあなたひとり―彼岸花―
「迷惑でなければもらってください。あなたにもらわれるなら僕は幸せですから」
キャンパスに描かれていたのは、河川敷から見える風景だった。
橋の上を走る線路。
緩やかなカーブを描く川。
そして存在感のある彼岸花。
ごめんなさい…約束は守れなかった。
「ママ?どぉしたの?どこか痛いの?」
「大丈夫…何でもないよ…。素敵な絵ありがとうございます…。大事にします…」
「…これからも強く生きていってください。僕はあなたの幸せを願っています」
約束するよ。
だからあなたも強く生きてください。
あなたは私を孤独から救ってくれた無敵の英雄だから。
彼は絵の具等をしまい、最後に一礼をして去っていった。
私はしばらくその絵を見てゆっくりと裏返しをする。
そこにはあなたからの最後のメッセージがあった。
“ずっと笑顔で”