窓に影

 ドアの閉まる音が聞こえてから、私はお盆にプリンの皿や紅茶のカップを乗せて一階に降りた。

 私が来るなり母は怒った顔をする。

「もう、見送りくらい来なさいよ」

「いいんだよ、あんなヤツ」

 ぶすくれている私を母が笑う。

「怒ってくれるんだから良い先生じゃない」

「怒り方ってのがあるのよ。あいつ、あたしだと思って容赦ないんだから」

 カップを流し台に並べるとそれを母が洗ってくれる。

「私が言ったのよ。煮るなり焼くなり、恵里ができるようになるならどうやってもらっても良いって」

 母め、また余計なことを。


 自分の部屋に戻ると、机には何年かぶりに消しゴムのカスが散らばっていた。

 かき集めてティッシュにくるみ、ゴミ箱に入れる。

 さっきまで歩が座っていた小さ目の椅子もたたんで壁に立てかける。

 はあ、疲れた。

 ベッドに寝転がろうとした時、ふと思い立ってカーテンを少し開けた。

 向かいの窓にはまだ明かりが点いていなかった。

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