窓に影
「恵里、何か欲しいものある?」
「欲しいもの?」
「うん。ホワイトデーのお返し」
ああ、なるほどね。
「特にこれといってないなぁ。何でも良いよ」
「何でも良いが一番困るんだけど」
確かに。
でも本当に欲しいものはないのだ。
「悠晴のセンスで選んでよ」
「了解」
悠晴は雑貨屋の前を通る度に熱い視線を向けていた。
そういうところが可愛くて、好きだ。
悠晴には歩とは別の魅力がある。
顔が良いし、明るいし、ロマンチストな癒し系。
素直で単純。
付き合い始めて一月も経てばたまにケンカもするようになったが、順調なお付き合いをしている。
そして火曜日。
悠晴とは真逆のタイプ、歩との時間がやってきた。
今日は一際甲高い母の声でそれを知らされる。