ハニー*スパイス


そこにいたのは、冴子さんだった。


ヘクセンハウスで百合さんのことを話してくれた時以来。

彼女に会うのは、ほぼ、一ヶ月ぶりだった。


「お久しぶりです」


ペコリと頭を下げる。


「じゃ……」と行き過ぎようとすると、「待って!」と呼び止められた。



「岳に会ってるの?」


そう聞かれて、首を横に振る。


「いえ、ここんとこ会ってません」


だって、岳さんはもう百合さんといるんだもん。


「そう……」



しばらく考え込んでから、冴子さんは言葉を続けた。



「じゃあ、岳がニューヨークに行ってしまうこと、知らないの?」


「え?」


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