蝉時雨
夕立
あれから4日が過ぎて、何故か私は毎日図書館にいて…

透さんには会えてない。



ミーンミンミン…


毎日、毎日、

暑い中鳴き続けている蝉達に


“…あんた等も頑張ってんだね”

なんて思う自分が可笑しかった。



「…透さん、こないなぁ。」


あの優しい笑顔が、私の脳裏に刻まれて…

あの日からおかしいんだ、私。


そう思いながら、図書室の入り口を見つめていた。






「おーっ!いたいた!!唄ぁっ!」


慌ただしい足音と共に、大きく手を振りながら元気な男の子が現れた。


「っ!!…なんだぁ、吉田か…」


見慣れた顔。

そこには、同級生の吉田 龍之介《ヨシダリュウノスケ》が立っていた。


「絶対ここにいると思ったしっ!お前ここしか来るとこねぇのかよ?!」


私の目の前の席に腰を下ろした吉田は、白い歯を見せて笑った。


「…ほっといてよ。」


黒い短髪に、うっすら日に焼けた小麦色の肌

身長は唄よりも20センチ近く高いだろうか。


図書館の中庭の片隅に、綺麗に整列した向日葵の様な元気な男の子だ。
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