題 未 定

密かな想い




「332円になります。」

袋に入った2つのアイスをダルそうにしている店員から受け取る。


「アイス!!アーイス!」

………ちくしょう。


隣にはさっそく
アイスにかじりつく葵。


「うーん!やっぱ最高だね高橋!」


………ちくしょー
可愛くて許してしまうっ!
我ながらキモいぜ…


俺らが座っている
木陰の木から
大音量のセミの声が聞こえる



「高橋ー?」

「なあになあに?」


「いやー夏って好き?」



葵が目をパシパシさせて
俺の方をみた。
思わず絶句する。

「……いや……。」



夏はどうしても
あの夏を思い出してしまう。
あの日のじりじりとした
なにかを焼き付けるような
夏のにおいを感じるだけで
俺は吐き気をおぼえる。



「……苦手なんだ俺。」



「ふーん。アイスが一番美味しい季節なのに!でもさ…?」


俺らの間にあった
ビニール袋をのけて
葵が俺の隣に座った。


「今年の夏は、二人だよ。」



寂しそうにそう言う
葵の手をそっと握った。


分かってる。
言わなきゃいけない。
隠し事なんてするべきじゃない。
だけど俺は言えないよ。

俺、ずるいんだ。
お前を失いたくない。

お前を泣かせたくない。
俺が辛いから。




「ずっと一緒にいよう。」



今は言えない。
だけどいつか必ず。





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