私、婚活します!
~お年頃~


「あぁん?お年玉ぁ?」


煎餅をボリボリと食べながら、ソファーに横になる咲子(25)


母親の言葉に聞き返し、視線だけを向ける。


「お年玉じゃないわよ……お年頃!咲子も、そろそろ25歳だし、お付き合いしている人を紹介……」


「はいはい、そのうちね。そ、の、う、ち!」


大袈裟にため息を漏らし、また煎餅に手を伸ばす。




「はぁ……大体、なんですかその格好」


咲子は、Tシャツにジャージ、前髪をてっぺんで結わえたスタイル。



「こんなんじゃ、天国のパパも悲しむわ」



今度は、母親がため息を吐き、キッチンへ向かう。









「パパ、ね……」



煎餅を食べる手を止め、咲子は天井を見上げた。




咲子が覚えている“パパ”は、ほとんどない。


唯一覚えているのは、幼稚園生だった小さい頃、友達と遊んでいて、隠れんぼに夢中になり、遠くでいつまでも1人で隠れていた。


だんだん暗くなり、不安になった時、パパが見つけてくれた。



息を切らせて、泣きそうな顔の咲子を見て、安堵のため息を吐いた後、思い切り頬を叩いた。




痛かったけれど、すっごく痛かったけど……パパの怒った顔の中の、泣きそうな瞳に、胸が痛かった。



でも、抱き締めてくれたパパ。



大好きだった、パパ……。







< 1 / 12 >

この作品をシェア

pagetop