昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
涙が、両目から溢れた。

あったかくて、優しくて、ごめんとありがとうとその他の気持ちがごっちゃんなってぐるぐる回る。



「…あんな、優子」

「………」

「好きや」

「……っ…、」

「好きやねん。俺と、付き合って。」


背中に回る腕の力が、強くなる。

肩に押しつけられたおでこが、沸騰したみたいに、熱い。


「…今な、俺多分めっちゃ弱味につけこんどるし」


風間の声が、震えて耳元に届く。


ほんまの、心からの声やって、伝わってくる。


「やからな。優子も存分に利用してくれたらええよ」

「……な…ん、」

「好きやなくてもええ。…忘れるために使えるんやったら使ってくれればええから」

「…かざ、ま」

「俺と付き合って。優子」


風間が顔を上げる。

ぼやけた視界に、真剣な顔。


こんなに真剣な表情の風間は、初めて見た。


そんでなんか。


風間まで泣きそうになっとるんは、なんで。



「…まさこ、」

「うん」

「好きやねん」

「…うん」

「……俺にしとけや」




「………うん…、」




そう答えたんは、紛れもなくウチの口。



──ゆう。



ウチを呼ぶ二文字の名前、それよりウチは、三文字の本名を選んだ方がずっとええから。

きっとずっと、それが正しいはずやから。




「………うん」





やからこれで、ええねん。














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