昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
きっと考えんようにしてた。かっちゃんと別れてから、無意識のうちに。



考えたくない。考えたらあかん。


今かっちゃんはさくらちゃんに会っとって、

多分一難こえて二人の仲は深まって、そんで久しぶりに会った二人が今、何をしとるかなんて。


かっちゃん、ゆうたやん。

大事な彼女にはこんなんせぇへん。じゃあ、あんなんを平気でされるウチは、一生かっちゃんの大事なひとにはなれへんってことやろ?



他の子に触らんといて。

触らせんといて。

同じことせんといて。


なぁ、今かっちゃんが別の子に触れとるって思ったら、息できんくらい苦しいねんか。

なぁ、あん時、笑っとったけど。ホンマは、めっちゃ苦しかったねんか。


なぁ、ホンマは。


別々になんか帰りたなかった。行かんといてって、言いたかった。



嫌や。嫌やねん。


かっちゃん、かっちゃん、かっちゃん。



かっちゃん。



「いたい……、」


涙が止まらんくて、言葉が喉に詰まって、どうしようにも表せない沸き上がる気持ちを抑えるように、風間のシャツを握る。

もう止まらんかった。


ホンマわけわからんと思う。やのに風間はウチに乗っかられたまま、じっとしてくれとって。



「…痛、い」

「うん」

「めっちゃ、痛い…、」

「……うん」


なんも言わんのに、なんも言わんけど、多分風間はわかってくれとって。

まるごと抱え込むみたいに、風間の腕が、ウチの体を抱きしめた。


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