昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
…米が足りんカノジョ、て。
このこのぉ〜とか言いながら肘でつついてくる店長。
…ええ人やねんけど、若干リアクションとかが親父っぽいねんな。
店長のニマニマした顔に、あいまいな笑みを返した。
「…いや、今日はええです」
外に出たら、思ったよりもひんやりした空気が首筋をかすめた。
ちょうど気持ちええくらいの夜の空気も、バイクで飛ばして帰るんにはちょっと寒い。
…まぁゆうて近い距離やねんけど。
リュックを肩に背負ったら、手ぶらになった両腕。
持って帰る荷物他にはないから。
…キッチンの中に見えた大量の使われんかった米。
胃袋に収まることなくゴミ袋に入っていくんを想像すると、ちょっと悲しい。
優子はよく、米料理ばっか作る。
パスタとか、パンとか、サンドイッチとか。そういうこじゃれたモンはお腹ふくらまん!とかなんとか言うてな。
炊飯器なんか、一人暮らしやのに五号炊きやし。
「また米なくなった〜!!」とか嘆いてたから、バイトの余りを初めて優子んちに持っていった日。
(…そういえば)
夜空の下、辿る記憶は今と同じ暗闇の景色。
――あの日も、はち合わせたんや。
優子と、まさるくんと。