昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


…米が足りんカノジョ、て。


このこのぉ〜とか言いながら肘でつついてくる店長。

…ええ人やねんけど、若干リアクションとかが親父っぽいねんな。

店長のニマニマした顔に、あいまいな笑みを返した。



「…いや、今日はええです」






外に出たら、思ったよりもひんやりした空気が首筋をかすめた。

ちょうど気持ちええくらいの夜の空気も、バイクで飛ばして帰るんにはちょっと寒い。

…まぁゆうて近い距離やねんけど。


リュックを肩に背負ったら、手ぶらになった両腕。

持って帰る荷物他にはないから。


…キッチンの中に見えた大量の使われんかった米。


胃袋に収まることなくゴミ袋に入っていくんを想像すると、ちょっと悲しい。



優子はよく、米料理ばっか作る。

パスタとか、パンとか、サンドイッチとか。そういうこじゃれたモンはお腹ふくらまん!とかなんとか言うてな。

炊飯器なんか、一人暮らしやのに五号炊きやし。


「また米なくなった〜!!」とか嘆いてたから、バイトの余りを初めて優子んちに持っていった日。



(…そういえば)



夜空の下、辿る記憶は今と同じ暗闇の景色。


――あの日も、はち合わせたんや。



優子と、まさるくんと。



< 276 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop