昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
どうしても同じ土台の上に立ってると思えへん。好きなんと、好かれてるんと。…優子のことで、やっぱり負い目があるからやろか。
「──で、なに?話って」
まさるくんが最後のハンバーガーを飲み込みながら言った。
「…ゆうのことやろ」
異様に喉が渇いとった。
ポテトの塩が、少ない水分を奪ってく。
ゆうのことやろ。
優子のこと。
みみっちい男みたいで誰にも言うてないけど、ホンマは。
まさるくんだけが優子を"ゆう"て呼ぶんも、ホンマはちょっと嫌やってん。
「…この前のことやけど。」
「うん」
「あん時…殴ったんは──」
「………」
「──ごめん。でも後悔はしてへん」
そう言うたら、まさるくんはふいをつかれたみたいに目ぇ丸くした。
「うん……つか、怒るんやないんや」
「え?」
「最初にごめんから来るとは思わへんかったわ。もう一発殴られるんか思てた」
まさるくんがあんまりにも飄々と答えるから、あの時の、あの瞬間の怒りがぶり返す。
震えるくらい、あんな怒りにまかせて誰かを殴るなんか初めてやった。
膝の上で、拳を握りしめる。
「…ほな、悪いことしたゆう自覚はあんの」