昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

思い出すだけで頭がガンガンする。殴られとるみたいに、ガンガン、ガンガン。

優子をあんな風に雑に扱ったことが許せへんかった。捌け口みたいに、気持ちも意見も全部無視して。

優子の気持ち、知らんくせに。


「…言うたやろ。後悔はしてへんって」

「………」

「今やってホンマは殴りたいくらいムカついとるよ」


汲み取ろうとも、してへんくせに。


「…なんであんなことした?」


まさるくんみたいに軽い気持ちで、優子は受け入れてたわけやない。

傷つけられても、その傷すら呑み込むほどの。


なぁ、知らんやろ。
お前のこと思って優子がどんだけ泣いてきたか。





しばらく沈黙が続いた。

ハンバーガーの包み紙のはしっこが、上から降ってくる冷房の風にひらひら揺らいで。



「…わからへん」



そう答えたまさるくんは、迷子んなった子どもみたいな幼い表情やった。

わからへん。もう一回言って、目を臥せる。


「わからん……けど、とられるんはいややったんかな」



…とられる、て。



「…意味わからん」


何やねんそれ。そんな子どものおもちゃみたいに。責任感のない独占欲。軽々しく吐ける言葉。

とられる、て、優子はお前のモンちゃうやろ?所有物みたいに言うなや。

少しも大事にしてないやんか。傷だらけになっとることにも、気づいてないやんか。



< 333 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop