昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
思い出すだけで頭がガンガンする。殴られとるみたいに、ガンガン、ガンガン。
優子をあんな風に雑に扱ったことが許せへんかった。捌け口みたいに、気持ちも意見も全部無視して。
優子の気持ち、知らんくせに。
「…言うたやろ。後悔はしてへんって」
「………」
「今やってホンマは殴りたいくらいムカついとるよ」
汲み取ろうとも、してへんくせに。
「…なんであんなことした?」
まさるくんみたいに軽い気持ちで、優子は受け入れてたわけやない。
傷つけられても、その傷すら呑み込むほどの。
なぁ、知らんやろ。
お前のこと思って優子がどんだけ泣いてきたか。
しばらく沈黙が続いた。
ハンバーガーの包み紙のはしっこが、上から降ってくる冷房の風にひらひら揺らいで。
「…わからへん」
そう答えたまさるくんは、迷子んなった子どもみたいな幼い表情やった。
わからへん。もう一回言って、目を臥せる。
「わからん……けど、とられるんはいややったんかな」
…とられる、て。
「…意味わからん」
何やねんそれ。そんな子どものおもちゃみたいに。責任感のない独占欲。軽々しく吐ける言葉。
とられる、て、優子はお前のモンちゃうやろ?所有物みたいに言うなや。
少しも大事にしてないやんか。傷だらけになっとることにも、気づいてないやんか。