昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


「……!?」

「こんばんわ〜」


…やっぱりな。


ガクッと肩を落とす。

こんな時間にこんな風に無遠慮なやつ、ほかにおらへんもん。


かっちゃん、以外には。


「な…んやねんかっちゃん…ベル鳴らせっていっつも…」

「だって窓開いてんねんもん、おじゃまします〜」


デカい図体が窓からのっそり入ってくる。…おい、せめて靴は脱げかっちゃん。

そもそも窓が開いとるんはカギが壊れてもたからで、そのカギを壊したんは酔っ払って暴れたかっちゃんのせいなんやけど。

そこんとこわかってますか、かっちゃん。


「何しに来たん…」

「え?何って…お・す・そ・わ・け」


ニンマリ笑ってデッカい紙袋を掲げるかっちゃん。

中にはたんまりと綺麗にラッピングされたチョコレートが入っていた。


「俺甘いモンあんま好きやないねんけど〜、くれるゆわれたら断れへんし?」

「………」

「いっぱいあるからぁ〜、ゆうにも手伝ってもらおかなぁって思てぇ〜」


ウザいウザいウザいウザいほんまウザい。

ほらな。必ずしも大好きな人のもとにバレンタイン様がやってくるとは限らへんねん。

なんでこんなヤツのところにばっか集まるん。

女の子たちみんな趣味悪すぎる。世の中不公平すぎる。


よっこらせ、とか言いながらかっちゃんが勝手にコタツの中に入ってきた。

無駄にデカい体をぎゅうぎゅう詰め込んでくるから、めっちゃ狭い。


「痛い痛い痛い蹴るなって!」

「今すぐ出て行って」

「なんでぇな、チョコいらんの?」

「アンタのお下がりなんかいらんわ!」


いくら大好物やからって、他の女の子が気持ちをこめて作ったモンをそう平気で食べるほど無神経やない。

…ってゆーかかっちゃんの場合これは親切心ちゃうねん、ただの自慢と嫌がらせやねん。


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