昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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結構前から気づいとってん。


優子がまさるくんのこと好きやってこと。




そん時はまさるくんちゃうな。まだ俺ん中で、"王沢くん"やった時や。


優子と話しとるとき、なんかの弾みで出た王沢の名前。まさるくんは色々有名やったから、他学科でもウワサになることがあった。


『…ソレ、ウチのいとこやねん』


初めて優子から、まさるくんの話を聞いたんはそん時。


すぐにわかった。分かってしもた。


一見不機嫌そうな優子の顔。どうしようもないヤツなんやけどなぁって、優子の口から出るんは悪口ばっかりで。

でも、その表情も声も。


…すきってゆうとるみたいに見えてん。聞こえてん。



普通の人にはわからへんかもしれへん。

でも俺は、優子の近くにおったから。


優子のこと、特別に意識しとったから。



優子はお人好しで、情にもろくて、強がりで、全部一人で抱え込もうとする。

ホンマは弱いとこあんのに、それ見せんといっつも笑っとる。

女やから、やなくて、女やけど、て言う。優子は誰にも媚びたりせえへん。


すごいなぁて思た。


そんで、抱えとるモンちょっとでも支えたれたらええなぁって思って…

…とかそんなまどろっこしい理由付けはどうでもエエねん。




つまり、気がついたらめちゃめちゃ惚れとってん。



しゃーないわ。














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