昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
「さくらちゃん、あれ見てっ!!すごいで!!」


ジェスチャー混じりにさくらちゃんに話しかける優子。

無駄にはしゃいで明るい声が、耳の後ろに当たって跳ね返る。


自分も昨日は泣いとったくせに、人にばっか気ィつこおて。

ほんま損な性格やなぁ。



(…損な性格なんは、俺もや)



優子のことが好きなくせに、相談にのって、話聞いて。挙げ句の果てに旅行までに同行。

とんだお人好しやな。自分でも思うわ。


旅行中、優子見とってよーわかった。

痛いくらいわかった。


…優子、まさるくんのことめちゃめちゃ好きやねん。

好きで好きでしゃーないねん。


時折まさるくんのこと見る顔がな。

一緒に笑ってても、アホゆうてても、こっちが切なくなるくらいの。


「ああっ!?風間、お土産買うん忘れた!!頼まれとったのに!!」


伸びてきた優子の手が、俺の肩を掴む。


「八ツ橋やろ?車取り行くとき買うといたわ」

「うっそ!?え、風間なんでそんな気ぃ利くん?」

「できた男やねん、俺」

「…ごめん、知らんかったわ」

「知らんかったんや」


ハハッて笑て、優子はご機嫌そうに鼻歌を歌う。

何の歌やって聞いたら、八ツ橋の歌やって。…何やねんソレ。


自覚してへんかもしれへんけど、優子は結構よーボケる。っていうか。


っていうか、一言言わせてもらうけど。


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