昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

「……え、…ただいま…?」


…あれ?

上から降ってきたんは、聞き慣れすぎた低い声。

ゆっくりと見上げる。


そこにおったんは、不思議そうな顔した…かっちゃんやった。


「え……かっ、」


…なんで、かっちゃんが、ここに。

チャイムまともに鳴らすとか珍しい。いっつも窓揺すって勝手に入ってくるくせに。

ここしばらくはウチの部屋に来ることもなかったけど。さくらちゃんが彼女になってから…


…ってそう言えば、ウチとかっちゃんは現在大ゲンカ中。


居心地悪そうに目線泳がせて、かっちゃんは手にぶら下げてたナイロン袋を手前に突き出した。


「あー…、あんなぁ」

「………」

「…すんませんでした」


ナイロン袋は近くのコンビニので、中身は30円の袋菓子。

…もしかして、謝罪の菓子折りのつもりですか。

っていうか30円て。やっすいなオイ。

さんじゅうえん。あ、ひらがなに変換したらますますマヌケやわ。

思わず吹いたら、かっちゃんが顔を上げた。

子供みたいな、不安そうな顔。デカい図体のくせして、男臭い顔のくせして、チワワみたいな目で見るんやめてくれるか。

かっちゃんは鼻が利く犬みたいにクン、て部屋の匂いをかいで、


「…今日カレーなん?」


ちょっと輝いた顔をした。


「え……、うん」

「へー…カレーなんや〜…」

「………」

「ふ〜ん…」

「…なんやねん。食べたいん?」

「うん」


コクって頷いてウチをじっと見る。


…ほんま、なあ。


なんかズルないか。怒ってたん、どっか行ってもたやんか。

ウチの頭ん中で三年前の出来事とおんなじくらい、遠くに追いやられる。


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