【鬼短1.】顔無し鬼
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−"かおなしさま。"


ある冬の朝。
まだ薄暗い時間。

霧の中からわたしを呼ぶ声。



この声は………



−"お嫁入りのとき以来、一回も来なくてごめんなさい。"

おかあさん……。



−"…ななは、ホントにいい子に育ったわ。

ホントに、いい子に……。"



疲れきった顔をして。
ななちゃんのために、朝晩働いているものね。


−"かおなしさま。どうか……どうかあの子を、守ってやってください…!"



………おかあさん。

かなこさん。


どうして泣いているんだい?


こんな朝早くに、もう仕事?



大きな荷物、持って……





おかあさん。




わたしはななちゃんを守るなんて出来ない。

守れるのは、あなただよ。
抱きしめてあげられるのは、あなただよ。




おかあさん…


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