キミは聞こえる
「馬鹿じゃないのか。おまえはもうすこし頭のあるヤツだと思ってたけどな」
「桐野よりは成績いいかな。これでもバスケ部代表だからね。あんまり悪いと格好付かないんだよ」

 さらりと自慢したなコイツ……!

 さりげなく代表と口にすることで、代表じゃない桐野との差をわからせようとする嫌味がありありと伝わってきて腹が立った。
 べつに代表になれなかったわけじゃない。
 負け惜しみではなく、ならなかっただけだ。チームメイトをまとめるだけでは代表は務まらず、もっとさまざまなことに目を行き届かせる事の出来る適任者が他にいただけだ。

(でもそれって結局は俺は設楽より周囲のことに気配りが出来てないってことだよな……)

 やはり自分は設楽より劣っているのではないか、という結論にぶち当たり、桐野は今度は自分自身に腹が立った。

 ……何やってるんだ俺は!

 自分で自分を追い詰めて、馬鹿なのはどっちだ。 

「茶化すな。ここで誓え。もう代谷に構わないと。あいつは迷惑している」

 設楽は一息で笑った。

「ハッ。なんで俺がおまえに誓わなきゃなんねぇんだよ。惚れた女に近づくのがそんなに悪いことか」

 女子たちには絶対に見せない顔だ。
 みんな騙されているだけなんだ。こいつの偽りの笑みに。綺麗な皮を被っただけの嘘の固まりに。
 みんな、みんなみんな、騙されているんだ。

「気を引きたいからってなにをしてもいいってことにはなんねぇだろ。現にあいつはてめぇに会ったせいで気分を悪くして倒れたんだぞ」
「発熱だろ? ただの風邪じゃねぇか。女子はスカートが短すぎるからな」
「ふざけてんじゃねぇ! 代谷本人が俺に言ったんだ。鈴分橋でおまえに会って怖かったって。だから逃げたって。確かに熱が出たのは風邪のせいもあったのかも知んねぇ。けど、全部が全部風邪ってのは俺は違うと思う」
「それが俺のせいだっていうのか。おいおい桐野、失礼にもほどがあるだろ。人を病原菌みたいに―――」
「これだけ言ってもまだ代谷の周りをうろちょろする気なら俺にだって考えがあるぞ」
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