キミは聞こえる
 静まったままの携帯を裏返す。

 連絡がないとわかっていて待ち続けることが、どれほど虚しいか。

 ならばいっそ、電源を切ってしまえばいいのに。

 そうわかっていてもすべてを断ち切ることが出来ないのは、あれこれと思いながらも心のどこかで期待してしまうからなのだろうか。
 届くことのない儚い願いだとわかりながら、それでも、夢を見たいと思ってしまうからなのか……。

 ごろりと寝返りをうって仰向けになる。

 顔にかかる髪を払い、その手を床に叩きつけた。痛みはなかった。
 後になってからじわじわと痺れのような鈍い痛みがした。もちろん大袈裟なほどではない。

 この胸の痛みに比べれば、こんなもの、なんてことはない。


 日が昇れば、また学校へ行かねばならない。
 会えることは嬉しくもあり、また辛くもある。心躍るばかりが恋ではないのだと、日増しに増える胸の痛みに手を押さえひしひしと思い知る。

 ねじれたワイシャツ。窮屈なボタンを外して放り投げる。
 ちらりと時計を見上げれば風呂に呼ばれるまではまだだいぶと時間があった。

 ああ宿題、と思いだしたけれど、いまは眠気が優先された。
 今日は、とにかく、疲れた。

 とりあえずこのどうしようもない荒んだ心をなんとかしよう。目が覚めて、風呂に入って、腸が動き始めたらカップ麺でもすすればいい。

 ベルトを緩めて布団をかぶった。右を向いて寝るのが桐野流だ。


 ほどなくして睡魔が意識を奪うとともに、目と目の間を一粒の雫が流れた。

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