キミは聞こえる
 涙が出るかと思った。

 なんだ、こいつ。

 ポジティブなのにも程がある。

 ここまで来れば、もはや病気だろう。

 すこし古い表現を使えば、こいつの頭はピーマンか。
 それとも、種の腐れたカボチャ?

 そういやカボチャって、中心から腐っていくんだよなぁ…こいつの脳みそがすでに末期だとしたら、小脳や脊髄、神経・筋肉諸々、設楽の身体を構成するありとあらゆるものがふわふわのぐちゃぐちゃのどっろどろ間近、もしくは冒されまくっているということか。

 そうかそうなのか。そうだったのか。

 だからこいつ、変態なんだなぁ……………


 気の毒なことだ。


≪心配してくれるのは嬉しいけど、腐れたカボチャは言い過ぎじゃないかな? それに、俺はスケベだけど、変態じゃないよ≫
≪自慢できることじゃないし。私ん中ではどっちも同じ類に収まるし≫
≪一緒にされたくないなぁ。大分違うし、スケベっつったら桐野も相当だよ≫
≪だったら桐野君も変態なんじゃない?≫
≪それ、本人に言ったらあいつ傷つくんじゃないかな≫
≪言いたきゃ言えば? エロ本に溺れてようが、アダルトビデオに鼻の下伸ばしてようが、やらしい妄想繰り広げてようが桐野くんの性欲に興味ない≫

 朝から話す内容じゃない。

 それも、せめてこそこそならいざ知らず、口にさえ出さず心で交わす話では絶対にない。

「あと一ヶ月――体育祭が終わって二週間もすれば期末試験が控えているということを忘れずに」

 なんとかについて話していた朝会担当ではない別の教師が、いまはステージでマイクを持っていた。

 まだ用があるのなら立たせる必要はなかったのではないだろうか。

 居眠り防止か。嫌味な教師たちだ。

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