キミは聞こえる
「泉、やったじゃん」
「さっすが」

 そんな声がそこここで聞こえ、幾つもの視線が泉の健やかな眠りを妨げる。

 無視出来ぬ不快感にしぶしぶとまぶたを上げて、ぎょっとした。

 桐野、佳乃、響子、千紗、クラスの違う小野寺までもが振り返り、泉を見つめていたのである。

 なにがどうなっているのか。わけもわからないまま、頬を引っ掻きながら前から回ってきたわら半紙の一枚を抜き取って後ろへと回す。

 と、そこで不意に目に留まった己の名前。

 その横に記された1という数字。

 それが表すものはと視線を上げて、ようやく泉は得心がいった。

≪おめでとう、代谷サン。やっぱりさすがだね≫

 途端、背筋がぞくっとして、横目に隣を見れば、そこにはいつものぽっちゃりのっぽ君ではない設楽の姿が。

 お得意の人の良い笑みを浮かべて首を軽く傾げる。

 その仕草に朝っぱらから反吐が出た。

 思わず手元に力が入り、中間試験順位発表のプリントがぐしゃりとシワを寄せる。

≪あれあれ、朝からご機嫌斜め? なにか嫌なことでもあったのかな≫
≪どうしてだと思う?≫
≪うーん、俺にはちょっとわからないなぁ。乙女心は複雑だから≫

 何の話だ。

 ぷるぷると掌が震える。雑巾を絞るようにプリントをぎしぎしとねじり上げ、なんとか平静を保つ。

「な、なんか泉の様子おかしくない?」
「よ、喜んでんの…あれ?」

 千紗、響子の声がする。

 そうか、どうやら現在の私は傍目にはほとんど平静を保てていないようだ。

 ――それがどうした。

 泉は開き直る。

 泉のご機嫌を大いに斜めにする原因がこんなにすぐ近くにいて、冷静でなんかいられるわけがない。

 と、心の中で悪態を吐けば、

≪いやぁ、嫌い嫌いも好きのうちってね。そんなに情熱的に思いの丈を見せつけられちゃあ俺、えへへ、こまっちゃうな~≫
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