キミは聞こえる
 およそ泉の口から出される単語とは思わなかったのだろう。

 無駄を嫌う彼女は、必然的に必要以上の会話を厭う。

 故に根拠のない話をそれも胸を張って言うなんて、普段の彼女からしたらまずあり得ないことだった。

 千紗に響子に佳乃、桐野までもが口をぽかんと開けて泉を見つめる。

「なにを堂々と言うかと思えば、勘て……」
「そういうことを言うやつとは思わなかったわ」
「みんなあれだけ地面掘って、なにも出てこない。てことは、残る可能性は上でしょ」
「こ、この場所を選んだことは…な、なにか意味があるの?」

 佳乃の問いかけに泉は片眉を上げた。

 なかなかいいところを突くじゃないか。

 桐野といい佳乃といい、今朝は二人とも見た目や普段の仕草からは考えられない鋭さを発揮している。

 普通、朝は脳が鈍る時間帯だというのに。

 だが、佳乃のその問いにたいして、泉は何も語ることが出来ない。

 ここから先は泉の特殊能力に関わるためだ。

 だから、泉はまた堂々と、

「勘」

 と繰り返した。

 四人は肩をすくめた。



 それからしばらく経って。

 やがて残りの男子のメンバーも合流して、班全員で探し始めて十分ほどが経過した頃。

「あっ、ちょっと! 来て! あれじゃない!?」

 千紗の声に、メンバーが一斉に顔を上げて、彼女の指さす方を注視した。

 蔦の絡んだひときわ太い幹の枝の股に、薄汚れた麻の袋がちょこんと乗せられていた。
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