trick Or trёat!


人は死んだら
どうなるんだろう。

無になるのかな。
それとも、あの世ってやつが本当に存在して、俺はそこに行くんだろうか。




…でも、神様。

俺、一つだけ
心残りがあるんだ。



最後に、一度でも
これが最後でも構わないから

アイツの笑った顔が見たい。


紅葉の笑顔を
この胸に、焼き付けたい。



…今更、だよな。
でもいつも怒らせてばっかりだったから。

そう願わずには、いられないんだよ。





掠れてゆく意識に、遠くからサイレンの音が聞こえる。


「…っ、い、つき…、」

「今救急車来るから!」


切れ切れになる呼吸で、支えてくれる樹に向かって呟いた。



「…俺、死ぬ…の、かな…。」

「何言ってんだよ!冗談やめろって!」

「…はは、」


もう、話す事すら出来ず
俺はぼんやりと空を見上げた。

瞼が重い。
この目を閉じたら、俺はこの世界から消えるんだろう。

紅葉の居ない、この世界から。



「…颯?颯っ!」

樹が俺の肩を揺らす。


残念だけど、どうやら俺はもうダメらしい。

だから視界に映る泣きそうな樹に、笑って言った。





「―――またな。」






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