フラミンゴの壁
第17章
静かな部屋のなかにさっきからついているテレビのニュースが聞こえている。
俺は耳で音声を追って気を紛らわせようとしたが、テレビでは俺の何度も名前と住所を言っていた。

アパートの外で大勢のひとが騒いでいるらしい。
呻き声と悲鳴がここへと近づいてきているのがわかる。
そのとき、窓ガラスがパリンと音を立てて割れた。
投石だった。
身の危険を感じたが、身動きがとれない状態で俺は必死に助けを求めていた。
階段をのぼる音がする。

俺をどうするのか?殺すのか、崇めるのか?しかし、俺自身がわからないことを暴徒たちがわかるのか?しかし荒々しい惨状だということは理解している。

自分の生死をかけて真直ぐなはずだ。
我先にと俺にすがるだろう。
そうなれば俺を中心に争奪の嵐が吹き荒れ八つ裂きにされると思った。

俺のアパートのドアの前でもう騒ぎが始まっている。
俺は焦りで冷や汗が出てきた。
さっきの投石のほか窓からは火炎ビンまで投げている奴がいる。
幸い部屋が火にくるまれることはないが、おそらくアパートの一階周辺には火がくすぶっていることは考えられる。
俺はなんとかきっかけを掴もうとしたが、もがくほかに仕草を仕組めない俺にきっかけを発動させる力はなかった。

ドアからものすごい音が聞こえる。
打ち壊すつもりだろう。
俺は自分の終わりを予感した。

ダナエとアテネに向かって悲鳴をあげた。

「助けて」と懇願するように、嗚咽とともに悲鳴をあげていた。
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