狐と兎
その一方で。

オルヒデは先程までキルシュに見せていた表情とは正反対に、

やや険しい顔をしながら受話器の向こうの相手と会話をしていました。


「……あ、もしもし。オルヒデです」
『ああ、何時も息子がお世話になっています。何かあったのですか?』
「ええ、高熱で倒れて運び込まれました」
『ええ!?』


電話の相手である男性は恐らくハルトの父親でしょう。

オルヒデは全ての事を彼に伝えました。ハルトの容体の事。

キルシュが自分の所に運んで来たのは、怪力である自分の姪っ子だったからだという事。

暫く自分の診療所で預かるという事を。


『運んだのが先生の姪っ子さんで良かったです……』
「他の診療所だったらあたふたしていましたからね」
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