狐と兎
ハルトはそれに驚く事もなく、ただ呆然としていました。

抱き締めたキルシュには熱を帯びたハルトの体温が伝わってきました。

それを感じながらキルシュはたった一言をポツリと言いました。


「凄い熱だったから、死んじゃうかと思った……良かった……」


キルシュの胸の中でその言葉を聞いたハルトが一体何を思ったのかは、分かりません。

ただ息苦しさを感じたのか、今にもまた倒れてしまいそうな気分でした。

しかしキルシュはそれに気付かずまだ自分の世界にいる様子。


「キルシュ、解放してあげようか?」


ピンチのハルトに救いの手を差し伸べたのはオルヒデでした。

オルヒデのたったその一言で、キルシュは我に返りすぐにハルトを離しました。

そんなキルシュの顔は違う理由ではありますが、ハルトと同じように赤く染まっていました。
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