狐と兎
「それは……貴方のお兄さんが里を壊そうとしたから!
だからって殺した張本人に復讐するとかって有り得ない!
あたしだってね、大事な人を殺されてしまったら殺した奴を殺したいって思うよ?
でもね、それって虚しいだけだと思うの。
というかね、貴方達が呪いをかけた人があたしの大事な人なの。
お願いだからあたしの大事な人を奪わないで……もし許せないならば、あたしが謝るよ」


既にボロボロであったキルシュは、その言葉を勢いよく吐くとよろめきました。

そしてうつむき、龍の言葉を待ちました。龍の顔を見る事が怖くなっていたのでした。


『壊そうとしたから殺すだと? そんなのお前達のエゴだろう?
そんな言葉で我らを納得させようなどとしたのか? 何処までも人間は浅はかだ』


キルシュは漸く顔をあげ、その予想通りの言葉に対して先程よりも勢いのない声で、

“失う痛みは大きいよね”とポツリと呟きました。

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