プラネタリウム ―流れ星に願う叶わぬ願い―

家族って…

おじさん達が暮らしていた家には、特別な物などない。生活に必要な物と音菜と過ごした日々での思い出の品々。
それは、音菜に家族というものを教えてくれたものばかりで、音菜にとっては大切で特別な物。

「今日は」

音菜が想い出の品々を見ていると、おばさんと同じ位の歳の人がやって来た。

「もしかして、娘さん?」
「はい。そうですが」
「そうなの。美子さんが良く嬉しそうに話してくれていたのよ。日本に残してきてしまった音菜っていう名前の女の子がいるって」
「おばさんが……」

電話もメールもするけれど、おばさん達の日常なんて知ることなかったのに、今、目の前にいる名前も知らないおばさんの友人が此処での日常を教えてくれた。


お気に入りのスーパー。日本食のお店。毎日のように通っていたという喫茶店。散歩コース。

その全てがおじさんと一緒だったと言う。実子がいなかった二人のもとに、音菜という一人の女の子がやって来ても、同じ日常を繰り返してきた。
それが、生活の場をアメリカに移しても、変わらないでいることに、音菜は嬉しく思い、涙を流した。
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