この手で紡ぐ神の欠片



  *

『人間の気配がします』

会話を一端止めて、
フェンリルが鼻を動かしながら
私に言った。

ケルべロスは
私たちからやや離れ
伏せをしていたが、
フェンリルのその言葉と同時に
3つの首を上げた。

「人間なら、見えないでしょ」

私はイレギュラ―だ。
まゆ一つ動かさず
フェンリルに言った。

フェンリルは低く小さく言う。

『――いや、何か違います』

私はさすがにまゆを動かし、
戻れ、と言って
本にフェンリルを戻した。

巨大な狼がいなくなり、
少し寂しくなった公園。

そこに一つ、

人影が伸びてきた。

私は数歩後ろに下がる。



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