天使と呼ばれたその声を
「ミチル、逃げなさい」
弱々しく放たれる言葉は思いの他説得力があって…。だけど、こんな状態の母親を置いて逃げる事は出来なかった。
何故、お母さんは帰って来たのだろう。ずっと実家に“避難”していたのに…。こんな無謀な事を、何故。
「離婚だぁ?ふざけるなよ?」
「……」
「こんなもん持ってくる位なら金持ってこい!!」
とても父とは呼びたくないソイツはぐしゃぐしゃに握っていた紙を二つに破り辺り散らす。目の前に次々と舞い落ちる紙にはお母さんの名前が書いてあった。
こんなにも罵声を浴びているのに涙一つ流さないお母さん。震えているのは私の方だった。その手を握りしめてくれるお母さんの手はとても温かい。
「オラ!稼ぎに行け!」
振り上げられた瓶が視界いっぱいになった。
「お母さん!!」