探偵学園Q
いま、ユイの声が聞こえた気がした。
咄嗟に周りを見渡しても姿は見えない。

幻聴か…?




「…………」




僕はいまだに何を引きずっているんだろう。
ユイのことはもう、忘れたいのに。

事件が解決しても
キンタやカズマがまた仲間として戻ってきても、少しも気分が晴れないのは、ユイのことが常にあるからなのか…。



‐半日前‐


「その様子だと今にも私を捕まえそうな勢いですね」

「…お前に聞きたいことがある」

「なんです?」

「……ユイをどこにやった?」

「……さあ?」

「ふざけるな!!あいつをどこにやった?!」

「なぜ気になさるんです?あの女はあなたを裏切ったのに」

「…気にしてるのは僕じゃない」

「んふ…あわれな人達だ」



「……あわれ?僕が?」



「……ヒントは…あなたの近くであり、知らない場所ですよ。……それでは」

ザッ



―――――――――



右近さんの家の近くの植物園でケルベロスに会ったときに思わずユイのことを聞いた。

なんでかなんて自分でもわからなかった。
気づいたらケルベロスにつめよっている自分がいて、そんな自分に僕が一番驚いた。



「………つ」



僕はユイを探しだしてもし見つかったとしてもどうするつもりだろう…



…違う。

見つかっても見つからなくても僕には関係ない…っ。
何も心配することなんて一つもないんだ…



そうだろ?
天草流…



「…ああ」



そのはずなのに、なんでこんなに胸が痛むんだろうか…

いやな不安が胸をよぎった。


一刻でも早くお祖父様に会わなくては…
< 123 / 195 >

この作品をシェア

pagetop