さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 千春と出かけても楽しいだろう。でもあたしは彼ともっと一緒にいたいと思っていた。

 彼は不思議そうに肩をすくめていた。

 何で自分を誘うのか分からないとでも言いたそうだった。

 彼を好きになった子たちはそんな感じで彼に扱われていくのかもしれない。

 普通の人になら愛の告白だと思われてもおかしくない言葉なのに彼は気づかない。

 はっきり言わないと気づいてもらえない。

 でも今だけはこんな関係を続けていたいと思った。

 自分の気持ちをはっきりと伝えて伝わらなかったら悲しすぎるからだ。

「いいよ。でもあまり遊びすぎないようにな。来年受験だろう?」

「ありがとうございます」

 あたしは頭を下げた。

「明日から補習休みだっけ?」

 あたしは頷いた。

 お盆の前後には補習が十日ほど休みになる。

「それなら時間があったら遊びに行く?」

 彼からそんなことを言われるとは思わなかった。

 あたしは何度も頷く。

「そしたら明日、本を借りに行っていいですか?」

 彼はあたしの言葉に笑顔で頷いていた。
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