さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 家に帰ると細身の人の姿が台所の中にあった。お母さんが先に帰っていた。

「楽しかった?」

 彼女はあたしを見ると、笑顔になる。

 今日、水族館に行くということは母に伝えておいたからだ。

「楽しかったよ」

「でも京香がデートね」

 母親は嬉しそうに微笑んだ。

「どうして知っているの?」

「見ていたら分かるわよ。それにさっき買い物に行こうとしたら京香と男の人が歩いているのを見たから」

「でも彼氏じゃないから。友達のお兄さんなの」

「そうなの? もし彼氏になったらそのときは紹介してね」

 あたしは母親の言葉に頷いた。

 でも、あたしと尚志さんが恋人同士になるなど、想像もできなかった。
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