さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「そんなに人気あったの?」

「人気が出始めた頃だからそれなりに話題になっていたのよ。私の周りでは特にね。綺麗な人だったからね」

 彼女は少しだけ寂しそうに見えた。

 母親は言葉を続ける。

「彼女も女優になるの?」

 千春のことを言っていると分かった。

「あの子は演技が上手なのに、別のことがやりたいんだって。普通に暮らしたいみたい」

「そうなの?」

 あたしは頷く。そして付け加えるようにして言った。

「千春がお母さんのこと綺麗だって言っていたよ」

「そんなことないわよ」

 彼女は悪い気はしなかったのだろう。

 嬉しそうに微笑んだ。

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