さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「その人は?」

 彼女の鋭い眼差しが杉田さんに向けられた。

 絶対にあたしが彼と遊び歩いて大学に行かないと言い出したと思っている目だった。

 大体彼を見ていたらそんなことしそうにないのがすぐに分かりそうなのに。

「あたしの従兄妹です」

 とっさに口から出てきた言葉だった。

 彼女の目はもちろん疑っている。

「そしたらね」

 彼はその場にいないほうがいいと判断したのだろう。

 彼はあたしの肩を叩くとその場から足早に去っていく。

 その判断は間違っていないと思う。

 あたしは彼女の目を見た。

 何となくこれから長い話につきあわされることは彼女を見ると容易に想像がついた。
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