天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「この偽善者!」

乙女シルバーとなった九鬼に向かって、刹那が叫んだ。

「私もお前も!闇から生まれたものなのに、偽善者ぶるな!」

刹那の言葉に、九鬼は悲しく微笑んだ。

「人は、誰も闇の中から生まれる。そして、取り出された瞬間、光に祝福される」

その九鬼の言葉を、刹那はせせら笑った。

「私は、祝福も!光もなかった!取り出されることもな!」

両手を失っていた刹那の肩の付け根が盛り上がると、新しい腕が生えてきた。

「な!」

目を見張る九鬼。

しかし、生えてきた腕は、黒く痛んでいた。

刹那は両腕を回して確認すると、

「腐りかけているけど、動く。捨てなくて、よかったわ」

両手を天に向けた。

そして、月ではなく…空一面を覆いつくす闇に祈った。

「闇の女神よ!私に力を!」


「闇の女神だと!?」

九鬼は、その言葉に構えた。

(闇の女神は、あたしと融合した後…アルテミアにやられたはず)





「ほお〜」

屋上から見下ろしていたアルテミアは、感心した。

「なるほどな」

それから、フンと鼻を鳴らすと、

「面白い!2つの闇の戦いか…」

腕を組んだ。




「アハハハ!」

高笑いする刹那の体に、流星の如く…闇の粒子が降り注ぐ。

すると、腐りかけていた腕の色が変わる。

「させるか!」

九鬼は、月に向かって飛翔した。

全身にムーンエナジーを浴び、それを足元に集中させた。

「月影キック!」

流れ星と化した九鬼の蹴りが、闇の粒子を切り裂き、両手を広げている刹那に向かって落ちる。

倍の大きさまで膨れ上がった刹那の体の中心に穴が、空いた。

九鬼は、刹那の後ろに着地した。

「やはり」

九鬼は振り返り、刹那の体を見た。

やはり…血は流れていない。

「その体の殆どが…あなたのものじゃないのね」
< 103 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop