天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「甘い!」

九鬼の手にソリッドの右足が当たった瞬間、そこを支点にして、身を捩ると被せるように上から左足を、九鬼の脳天に叩き込もうとした。

「な!」

今度は、ソリッドが驚く番だった。

九鬼はソリッドの右足が当たる寸前、腕を水平にした。そして、身を屈めて半歩下がると、ソリッドの右足の付け根に肩を入れて上に上げることで、バランスを崩さしたのだ。

空振りしたソリッドの左足が、地面についたを確認すると、九鬼は半転し、彼の首筋にバックアンドブロウを叩き込んだ。

さらに間髪を入れずに、膝を入れようとした九鬼は違和感を感じ、後ろに下がった。

「!?」

ソリッドから離れる時、九鬼の黒髪の先が塵になった。

「勘がいいな」

ソリッドはにやりと笑った。 そして、胸を張ると、服が塵になり…オウパーツを露にした。

「胸のオウパーツ!」

離れた距離から見ていたエルは、絶句した。

「まだ2つのオウパーツに慣れていないが…」

ソリッドは、左足のオウパーツを発動させた。

胸のオウパーツと別々に発動させることに、慣れていない為に、バックアンドブロウを叩き込んだ時に、九鬼を塵にできなかった。

胸のオウパーツを発動させようとした一呼吸の間に、九鬼の本能が反応したのだ。

「まあ〜いい。この戦いで、慣れさせて貰うぞ」

ソリッドは、2つのオウパーツを発動させながら、九鬼に向かって歩き出した。

「九鬼さん!」

エルの心配そうな声に、九鬼は振り返らずに、大丈夫とだけ言った。

「その右足のオウパーツも貰うぞ!」

歩く速度から一気に、スピードを上げたソリッド。

一瞬の内に間を詰め、オウパーツの波動で、九鬼を塵にしたはずだった。

しかし、ソリッドは目を見開いた。

「貴様!」

顔をしかめながら、振り返ると、ソリッドの後ろに九鬼が立っていた。

「オウパーツを扱えるのか!?」

九鬼がさっきまで立っていた廊下の床が、抉れていた。

「あり得ん!」

ソリッドは反転した。

「オウパーツを扱うには、訓練が必要なはずだ!ただ着けただけで扱えるか!」
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