天空のエトランゼ〜赤の王編〜
肩から感じる温かさに、九鬼ははっとして、理事長の顔を見た。

理事長は優しく頷くと、肩から手を離した。

「私は感謝しております」

理事長は、部屋の中を歩き出した。

九鬼は振り返り、理事長の背中を見つめた。

「孫の蘭華のことも知ることができましたし」

理事長は足を止め、部屋の扉の上に飾られた歴代の理事長の写真を見上げた。

「蘭華…」

デスパラードの化身であるタキシードの男の罠にはまり、偽りの乙女ソルジャーの力を失い…森をさ迷っていた時、九鬼は蘭華に会っていた。

乙女イエローの神流と、戦っていた…乙女ブラックであった彼女と。

しかし、蘭華は九鬼の目の前で、神流に負けた。

変身が解け、生き絶える前に、蘭華は乙女ケースを森に投げた。

そして、偶然にも…乙女ケースは、九鬼の前に転がったのだ。


「すいませんでした…」

蘭華を助けることができなかった九鬼は、理事長の背中に頭を下げた。


「あなたが、謝ることはありません!」

理事長は、頭を下げた九鬼に注意した。

「元々…私達黒谷家は、乙女ブラック…いや、月の女神の配偶者である乙女シルバーに仕える為に、つくられた一族です」

理事長の肩が、小刻みに震えていた。

「それなのに…あの子は、闇に魅せられ…乙女ソルジャーの力を使ってしまった。月の従者である身なのに!」

今度は、理事長が振り向くと…頭を下げた。

「申し訳ありません」


「!」

理事長の行動に、九鬼は狼狽えた。

「頭を上げて下さい!理事長が、頭を下げることはありません」

それでも、しばらく理事長は頭を上げなかった。

数秒後、ゆっくりと頭を上げた理事長は、真っ直ぐに九鬼を見つめ、

「我が大月学園は、乙女シルバーであるあなた様に、忠誠を使います」

今度は、ゆっくりと跪いた。 顔だけは、九鬼を見つめたまま。

「力無き…いずれ滅びる定めにある人という種を…」

そして、深々と頭を下げ、

「導いて下さいませ」
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