天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「先代の?」

九鬼も写真を見た。

「いえ…我々の先祖と言った方がいいでしょう。闇の女神との戦いに疲れ果てていた…ご先祖は、ムジカの話に乗り、彼女に手を貸したのです」

理事長は、写真を見つめながら、一筋の涙を流した。

「故に…我々は、真相を知った月の女神に激怒された。だから、我々は月の使者でありながら、黒の名を背負うことになった」

「理事長…」

「そして…ムジカは、シルバーが転生するその日まで、自ら眠りについた。我々黒谷一族は、罰として…ムジカが眠る土地の見張りを命じられた。神話の時代から、我々はここにいる」

理事長は、九鬼に目をやり、

「ムジカの思惑を知った月の女神は、闇の女神が絶対に復活しないように、魂を封印した乙女ケースを月へと幽閉した」

しかし、魂の封印は、九鬼が騙されて解いてしまった。

「しかし、闇の女神は現在に復活した。異世界を創った月の女神も、復活した。そして!不完全ではあるが、乙女シルバーも復活した」

九鬼は、自らの乙女ケースを握り締めた。

「だから、ムジカも復活した」

「だとしたら!ムジカは、あたしに会いにくるのか?」
「もしかしたら…もうそばにいるかもしれません」

「ク!」

九鬼が唇を噛み締めた瞬間、部屋を包んでいたムーンエナジーが見えた。

「話は、ここまでです」

理事長は机を回ると、椅子に深々と腰かけた。

「私達は、あなたを全面バックアップは致します」

「…ありがとうございます」

九鬼は頭を下げた。

ゆっくりと顔を上げると、理事長を見つめ、

「しかし!お気持ちは嬉しいのですが、あなた方のお力を借りるつもりは、ございません。丁重にお断り致します」

そう言うと、背中を向け、理事長室を去ろうとする九鬼に、

「そう言うとは、思っていました」

理事長はため息をつき、

「最後に…警告だけはしております」
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