天空のエトランゼ〜赤の王編〜
扉のノブに手をかけた九鬼は、動きを止めた。

「この学園のすべてを、黒谷家が握っている訳ではありません。学園内に、不穏な動きも報告されています」

理事長は、机の腕で両肘をおき、

「もしかしたら…ムジカよりも、恐ろしい者が…」

「天空の女神…」

九鬼は呟くように言った。

その名に、理事長は無言で頷いた。

「わかっています」

ノブを握り締めると、扉を開けた九鬼の背中に、理事長は言った。

「天空の女神は、半分は…人類の味方でしょう。しかし…もう半分は、魔王ライの血が流れているのです」

九鬼は振り返り、

「魔王ライとは、何ですか?」

「神です」

理事長は即答した。

「但し…人類の味方ではない神です」

「神…」

九鬼はその言葉を噛み締めた後、部屋から飛び出そうとして、半身を廊下に晒しながら、振り向いた。

「最後に、おききしたい」

「何ですか?」

「今日。転校してきた生徒は一体?」

九鬼の脳裏に、太陽のように輝く浩也の姿がよみがえる。

「転校生は、2人います」

理事長は首を捻り、

「確か…1人は、元安定者のジャスティン・ゲイからの紹介のはずです」


「ジャスティン・ゲイ…」

九鬼は思い出した。

カレンが、自分に向けて言った言葉を…。

(あたしに戦い方が、似ているといった男の名前…)



九鬼は理事長室を後にすると、廊下を早足で歩き出した。

(カレンにきいてみよう)

浩也は、カレンを叔母と言っていたし…。

廊下を急ぐ九鬼の後ろ姿を、理事長室のさらに奥の廊下の影から見送っている生徒がいた。

「九鬼真弓…」

それは、阿藤美亜だった。

< 127 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop