天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「幽玄の美しき月」

まだ太陽の光に邪魔されて見ることのできない月を見上げ、大月学園で一番高い場所である時計台の上で、佇む1人の少女。

その身に一糸も纏わない姿を、授業中の生徒達は見ることができなかった。

一限目に、体育の授業もなかった。

少女は月を見上げながら、口元に笑みを浮かべた。

「だけど…あなたは、抜け殻…。愛する男を忘れ…違う男にうつつを抜かす…愚かな子」

少女は両手を広げた。

そして、太陽の光にその身をさらす。

「闇は、太陽に食われた。だけど、その太陽の闇は、誰が晴らすのかしら」

目を細めながらも、少女は笑い続けた。

「愚かで憐れな妹達に、幸あれ」

少女は、時計台から飛び降りると、漆黒の闇に似た布を纏った。
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